コラム

「女性の脱毛症」の実態【専門医師の目線】

浜松AGAクリニック院長の佐々木です。

本日は、男性の脱毛症よりも複雑で専門性の高い女性の脱毛症について解説していきます。

型にはまったどこにでもあるような情報ではなく、実際の診療に則した形でご説明していこうと思います。

 

 

●女性の脱毛症とは

 

女性の脱毛症は男性の脱毛症とは異なり、生え際やつむじ周辺の軟毛化ではなく、「全体的にぼわっとした」印象の脱毛症を呈することが多いです。

この「全体的にぼわっとした」印象を指す医学用語が「びまん性」であるため、女性の脱毛症の多くは「びまん性脱毛症」と呼ばれるものに分類されます。

頭頂部を中心とした全体的なボリューム感の減少を来すため、「分け目が目立つようになった」、「髪の毛のふっくらした印象がなくなってきた」、「髪を結んだときの量が少なくなってきた」といった症状で気付く方が多いです。

 

 

●女性の脱毛症の原因

 

男性の脱毛症の大半を占めるAGAでは、根本の原因は、「ジヒドロテストステロン(DHT)による毛周期の成長期の短縮」であると明確に分かっていますが、女性の脱毛症の原因は多岐にわたっており、明確に一つの原因だけを示すことは難しいです。

そのような中でも主な原因として挙げられることが多いのが、「ホルモンバランスの変化」、「加齢」、「休止期脱毛」の3つになります。

 

「ホルモンバランスの変化」の影響を最も強く受けるのは、閉経前後の40〜50代の女性です。元々女性にも女性ホルモンだけでなく男性ホルモンの分泌がありますが、閉経により男性ホルモン分泌の割合が上昇します。これにより髪の軟毛化が起こるということが示唆されていますが、男性と同じような生え際やつむじ周辺に限局した脱毛症にならず、びまん性脱毛症を呈することが多いです。

 

「加齢」によって全身の血行状態は徐々に悪くなり、それとともに頭皮の血流、特に頭頂部付近の血流が悪くなっていきます。全ての細胞は血流から栄養や酸素などをもらうことで細胞としての機能を果たしていますが、これは毛根の細胞についても同じで、毛根の細胞にいく血流が減るほど「毛根の細胞の働き=発毛」も悪くなってしまいます。このことも頭頂部を中心とするびまん性脱毛症の原因になっていると考えられています。

 

「休止期脱毛」とは、身体的・精神的ストレスがかかることで、毛周期の中で髪の毛を太く長く育てる段階である成長期が途中で急に終わってしまうことを言います。代表的なストレスの原因としては、出産、急激なダイエット、手術、重篤な感染症、転職、引越しなどが挙げられます。また、これらのストレスを受けてすぐに脱毛するわけではなく、2〜3ヶ月のタイムラグがあることが多いため、ストレスの原因が分かりづらいことも多いです。その上、ストレスというのは定量的に評価のしづらい(「あなたのストレス値は80/100です」というようには客観的に示すことが難しい)ものであり、関連性をはっきりと示すことが難しく、問診をしていく中で推定するしかない若干曖昧なものになります。しかし、私自身何千人もの脱毛症診療をしてきた中でも、やはりストレスと脱毛症は何らかの関連はあるのではないかという実感があります。そのため、医師に対して適当なことや曖昧なことは言いづらいと思うかもしれませんが、患者様が自らの脱毛症の原因をどう捉えているのか、何かストレスはあったのかなどは参考にさせていただいていますので、是非診察時におっしゃっていただけたらと思っています。

 

 

●女性の脱毛症の分類

 

女性の脱毛症の多くはびまん性脱毛症を呈しますが、その中でも脱毛パターンが大きく3つに分けられています。その3つのパターンというのが、頻度が多い順に「ルードウィッグ型」、「オルセン型」、「ハミルトン型」になります。

 

「ルードウィッグ型」は女性の脱毛症の75%程度を占めるもので、頭頂部を中心としたびまん性脱毛症となります。最も大きな特徴としては、「全体的に薄くはなるが、生え際の毛は変わらず残る」ということです。そのため、初期段階ではあまり問題視されづらく、気付いた時にはかなり薄くなってしまっていることが多いです。こちらのルードウィッグ型をベースとしたルードウィッグ分類(GradeⅠ~Ⅲ)が女性の脱毛症の分類としては有名ですが、日本人女性にはGradeⅢの方はほとんどいないため、より細分化された分類方法であるSinclair Scaleの方が日本人の評価に適した分類方法になります。

 

「オルセン型」は女性の脱毛症の20%程度を占めるもので、頭頂部から前頭部にかけての中央部分(いわゆる分け目の部分)から始まるびまん性脱毛症となります。最も大きな特徴としては、「頭頂部よりも前頭部の方が脱毛範囲が広い」ということです。その様子を前部上方から観察した形がクリスマスツリーに似ていることから「クリスマスツリー型」とも呼ばれます。こちらは「ルードウィッグ型」とは異なり、生え際の毛量減少も来すため、症状初期から自覚しやすいものになります。

 

「ハミルトン型」は女性の脱毛症の数%を占めるもので、男性と同様生え際を中心とした脱毛症となります。こちらのパターンの原因としては男性ホルモンの関与が示唆されており、実際に治療としてもミノキシジルに加えてフィナステリド(AGA治療薬で男性ホルモンの一種を抑える薬)併用で改善度が良かったというデータもあります。こちらはまだ研究段階の域を脱していませんが、閉経後の女性を中心に「ハミルトン型」に対してはフィナステリド内服も標準的な治療法となることも想定されています。

(※通常、フィナステリドは女性には使用しないですが、この理由としては妊孕性/催奇性が挙げられており、閉経後の女性に対する使用では問題が生じることはほとんど想定されません)

 

 

●女性の脱毛症の治療

 

女性の脱毛症の治療方法として検討されるものは様々であり、代表的なものだと「ミノキシジル内服or外用」、「栄養素補充」、「赤色LED」、「成長因子導入メソセラピー」があります。

 

ミノキシジル内服or外用については、治療しながら効果・副作用を評価して用法用量などの選択をしていきます。

 

栄養素補充としては、不足することで脱毛症を呈することが分かっている鉄や亜鉛、ビタミンB群を中心として摂取することが推奨されます。

 

赤色LEDについては、専用の機器を用いて週に1回以上、1回20分程度、頭皮に赤色LEDを照射することで、毛根部分に成長因子を誘導することができ、毛周期の成長期誘導・維持や毛根部分の血流量増加を期待できます。

 

成長因子導入メソセラピーは毛根部分に直接注射で成長因子もしくは成長因子を誘導する成分を打ち込むもので、先進医療に分類され今後が期待されている治療方法です。

 

女性の脱毛症の治療は男性のものと比べて難渋することが多いため、これらの治療方法を定型的に行うのではなく、定期的に効果や副作用の評価をしながら治療を適正化していくことが必要です。このことを実現するためには、信頼できる専門性の高い医師と出会い、継続して診察してもらうことが重要です。

 

浜松AGAクリニックでは院長である私が全ての患者様の診察・治療を担当しています。私自身今まで治療してきた患者様の30%程度は女性の患者様だったので、女性の患者様特有の悩みもよく知っていますし、難渋しながらも発毛までたどり着いた治療経験も豊富にあります。

当院のカウンセリングでは、「今の髪の毛の状態はどうなのか」、「治療することは可能なのか」、「どのような治療方法が適切なのか」、これら全てについて明確に示します。当然初めに決めた治療方法の100%が順調にいくわけではありませんが、常に適切な治療方法を示していくことはできます。髪の毛について悩んでいらっしゃる方は是非一度当院の無料カウンセリングを受けにお越しください。ご来院お待ちしております。

 

※当記事執筆者(浜松AGAクリニック院長 佐々木 宥典)については以下ご参照ください。

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